コラム

プールのリノベーション・改修はどこまでできる?症状別に見る判断材料と選択肢

築年数が経過したプールでは、水位が下がる、水がすぐ濁る、ろ過機が止まるといった不具合が重なって出てきます。改修でどこまで手を入れることになるかは、傷んでいる部位によって変わります。プールは水をためる躯体、水を漏らさない防水層、水をきれいに保つろ過循環設備という3つの要素で成り立っていて、どこが劣化しているかで打ち手が違うためです。

この記事では、症状から原因の部位を切り分ける方法と、補修と全面新設のあいだにある選択肢を整理します。

この記事でわかること

  • 水位の低下や水の濁りといった症状から、傷んでいる部位を見分ける手がかり
  • 「ろ過機だけ」「ライナーだけ」の交換が成立しにくい理由
  • 既存の躯体を残したまま作り直す方法と、見積もりを左右する要素

プールの改修は、躯体・防水層・ろ過循環設備のどこが傷んでいるかで変わる

プールは3つの要素が組み合わさって機能しています。プールが使えなくなっている状態は、このどこかが役割を果たせなくなっている状態と言えるでしょう。

要素役割具体的に指すもの
躯体水をためるコンクリートの構造体
防水層水を外に漏らさない表面の塗膜、内側に張るPVCライナー、タイル下地の防水処理
ろ過循環設備水質を保つポンプ、ろ過装置、配管、機械室

設置から年数が経てば、躯体のひび割れ、防水面の傷み、配管からの漏水といった劣化は避けにくくなります。築年数が経過したプールでは、複数の部位に同時に不具合が出ていることも珍しくありません。水も濁る、水位も下がる、ろ過機の調子も悪いという状態になると、どこから手をつければいいのか判断がつかなくなります。

まずは、目に見える症状から、どの部位を疑うべきかを整理していきます。

症状から、傷んでいる部位をどう見分ける?

傷んでいる部位の当たりをつける手がかりは、「水の量に関わる症状」か「水の質に関わる症状」かという分け方にあります。水の減り方に異常があれば躯体か防水層、水の濁りやろ過機の動作に異常があれば循環設備が候補になります。

水の減りが早いときに疑う、躯体と防水層

躯体と防水層はどちらも水を外に出さない役割を担っているため、どちらが傷んでも「水が減る」という同じ症状で現れます。蒸発による自然な減り方とは明らかに違う速さで水位が下がる場合、この2つに加えて埋設配管の継ぎ目からの漏れが候補になります。

水を抜いた状態であれば、次のような点を自分で確認できます。

  • 底面や壁面のひび割れ
  • 塗膜の剥がれや浮き
  • ライナーのしわ、めくれ
  • 手で触ったときの表面のざらつき

表面が滑らかさを失っている場合、防水層が寿命に近づいているサインと考えられます。一方で、埋設された配管からの漏れは、プールの内側をいくら見ても判別できません。屋外プールの場合、漏れた水は土に吸われていくため被害が目に見えず、気づいたときには進行していることもあります。

防水の工法によって漏水への強さがどう変わるかは、プールの水漏れを防ぐ防水工事とは?地震に強い強化PVCライナーと従来工法の違いでも解説しています。

水が濁る・ろ過機が止まるときに疑う、循環設備

ろ過は水を循環させながら汚れを取り除く仕組みなので、循環が弱まると薬剤を入れても水質が安定しにくくなります。症状ごとに考えられる原因は次のとおりです。

症状考えられること
水を張って数日で緑がかってくる循環ろ過が十分に働いていない
ポンプの異音、起動しない、途中で止まるろ過装置本体やモーターの寿命
長期間使わずにいた後、水質が安定しない配管の内部に汚れや藻が残っている
機械室内に錆やにじみが見られる配管やバルブの腐食

機械室を設けている従来型のプールでは、確認する対象は装置本体だけにとどまりません。機械室内の配管やバルブに腐食が出ていれば、そこも合わせて手を入れることになります。

ろ過方式によって維持費や手入れの手間がどう変わるかは、「プールろ過器の選び方で維持費が変わる!主流3種類の比較と逆洗不要のシステムとは」にまとめています。

プールの改修は、補修と全面新設の二択ではない

傷んだプールを前にしたとき、思い浮かぶのは「傷んだところだけ直す」か「全部壊して作り直す」かの二択になりがちです。しかし実際には、既存の躯体を土台として残したまま、内側から作り直すという方法があります。

「ろ過機だけ」「ライナーだけ」の交換が難しい理由

プールの躯体・防水・ろ過は、それぞれが互いの仕様に合わせて選ばれています。そのため、どれか1つだけを新しくすると、他の部位と噛み合わずにプールとして機能しなくなることがあります。

たとえばろ過装置は、既存の配管径や循環経路を前提に能力が設計されています。装置だけを新型に入れ替えても、配管側がその流量に対応していなければ、期待した水質が保てない場合があります。防水層も同様で、下地となる躯体にひび割れが残っている状態で表面だけを新しくしても、同じ場所から傷みが再発することがあります。

もう一つ、プール改修には躯体工事・防水工事・設備工事という異なる分野を横断する必要があるという性質があります。これらをまとめて設計・施工できる事業者は限られるため、部位ごとに別々の会社へ依頼しようとすると、全体の整合を誰も見ていない状態になりかねません。

既存の躯体を残したまま、内側から作り直す方法

既存のコンクリート躯体を土台として残し、その内側に新しい構造と防水層を組み直すという進め方があります。全面新設との違いは、解体と掘削の範囲が小さくなる点にあります。

プール工事では、掘削や残土処分といった土工事が費用の大きな部分を占めます。地盤の状態や敷地条件によって金額が動きやすい部分でもあるため、ここを縮められるかどうかは全体の見積もりに影響します。

あわせて、埋設配管に依存しない方式へ切り替えれば、漏水の原因になっていた経路そのものを使わずに済む場合があります。古い配管を残したまま新しい設備をつなぐと、漏れのリスクを抱えたままの改修になりますが、循環の仕組みごと切り替えるという考え方もあります。

ただし、この方法をどのプールでも選べるわけではありません。既存躯体の劣化が進んでいる場合や、構造そのものに問題がある場合は、土台として使えないこともあります。採用できるかどうかは、水を抜いて躯体の状態を確認したうえでの判断になります。

プールの改修費用と工期は、何で決まる?

プール改修に一律の相場が示しにくいのは、既存プールの施工年代・工法・劣化の進み方が現場ごとにすべて違うためです。同じ大きさのプールでも、躯体が使えるかどうかで工事の内容がまったく変わります。

水を抜いて躯体の状態を確認するまでわからない部分が残るため、現地調査の前に確定的な金額を出すことは難しくなります。新設した場合の費用構成については自宅プールの費用相場と維持費の目安|機械室不要でコストを抑える賢い選び方で整理しているので、改修と比べる材料として参考にしてください。

見積もりを左右する4つの要素

改修の見積もりを動かすのは、主に次の4点です。

  • 手を入れる範囲:防水層の張り替えにとどめるのか、躯体構造から組み直すのか
  • 既存設備の扱い:埋設配管や機械室を再利用するのか、使わずに新しい方式へ切り替えるのか
  • 機能の追加:温水化、水質の自動管理、水中照明の追加など、改修と同時に仕様を上げるかどうか
  • 現場条件:資材の搬入経路が確保できるか、重機を入れられる敷地かどうか

このうち、後から追加すると割高になりやすいのが機能の追加です。温水化や照明の増設は、躯体や配管に手を入れているタイミングで一緒に進めるほうが、工事を重複させずに済みます。

現地調査を依頼する前にこの4点について自分の希望を整理しておくと、初回のやり取りから具体的な話に進めやすくなります。

使いたい時期から逆算した、相談を始めるタイミング

プール工事は水を抜いた状態で行うため、プールを使わない時期に着手するのが合理的です。

改修は、現地調査、躯体状態の確認、仕様と見積もりの決定、そして工事という順に進みます。調査してから工事に入るまでにも検討の時間が必要なので、シーズン直前の相談では間に合わないこともあります。工程ごとの期間の目安はプールの施工期間はどれくらい?完成までの流れと新築計画に組み込むコツが参考になります。

なお、漏水が疑われる状態を長く置くと、水が回った箇所から躯体側の劣化が進むことがあります。躯体を土台として使えるうちに状態を確認しておくほうが、選べる工法の幅は広くなります。

今ある形を活かして作り直す|マジラインプールという選択肢

傷んでいる箇所が複数にまたがっていて、どこから手をつければいいか決めきれない。そうした状態のプールでも、躯体・防水・ろ過をまとめて見直せれば、作り直せる場合があります。プールカンパニーでは、フランス製のマジラインプールを使った改修のご相談をお受けしています。

33cm刻みのパネル構造で、今ある形に合わせて組める

マジラインプールは、幅33cmのパネルを組み合わせる特許取得のモジュール構造を採用しているため、L字型や変形、円形といった形状にも対応できます。

既存プールの輪郭は現場ごとに違いますが、この構造であれば、今ある形に寄せた設計がしやすくなります。つまり、新しいプールの形に合わせるために既存躯体を大きく壊す必要が減ります。

また、大型重機を使わずに搬入・施工できるため、進入路が限られる住宅地でも計画を立てやすくなります(現場の状況によって異なります)。

ろ過機一体型の構造で、改修後の手入れも軽くなる

マジラインプールは、ろ過装置を躯体と一体化させた構造のため、機械室を必要としません。従来型で漏水の原因になりやすかった長い埋設配管に依存しない設計になっています。

改修後に「また同じ場所から漏れるのではないか」と気にし続けなくて済む点は、一度漏水を経験した方にとって大きな違いになります。機械室に充てていたスペースを別の用途に使えるようにもなります。

施工事例|既存プールを残したまま、コストと工期を抑えて作り直す

改修前

改修後

神奈川県湯河原で完了した改修工事では、既存のプールをそのまま残し、その内側にひとまわり小さいマジラインプールを設置しています。既存躯体の解体と撤去、それに伴う土工事の範囲を抑えられるため、費用と工期の両方を短縮できました。

温水化のためのヒートポンプや、水質・水温・水位をアプリで管理できるiMAGI-Xなど、改修と同時に仕様を上げるための設備も用意しています。ライナーの色柄も豊富に揃えているので、傷んで色あせた状態から、今の暮らしに合う雰囲気に変えることができます。

改修後のプールがどう見えるかは、写真だけでは判断しづらい部分です。全国のプールカンパニー展示場では、ライナーの色柄やろ過機の納まりを実物でご覧いただけます。プールの状態についてのご相談も承っていますので、お気軽にお立ち寄りください。

▼ 導入に関するご相談もお気軽にお問い合わせください。