第1回 夏だけじゃない。温水プールが変えた稼働率の話
バケーションレンタルの”メインの武器”
不動産ディベロッパーとして、建物の設計から運用まで一貫して手がけるY様。鎌倉や箱根など複数のバケーションレンタル施設を展開するなかで、今回初めて屋外プールを導入されました。
「Airbnbとか、いろんなプラットフォームでプール付きの宿泊施設を探しているお客様は多い。プールはこの施設のメインの武器になると思っていました」そう語るY様。
プラットフォーム上でプール付き物件を絞り込んで探すゲストは年々増えています。検索条件のひとつとして「プール付き」が当たり前になりつつある今、プールの有無は予約率に直結する差別化要素です。Y様はその変化をいち早く捉え、今回の施設設計に反映させました。
夏休みに来られない人にも来てもらえる施設へ
プールを導入した理由は、集客の差別化だけではありません。温水化によってオフシーズンの稼働を伸ばすという、事業としての明確な狙いがありました。
「夏しか稼働できない施設になってしまったら意味がない。ヒーターがあることで、真冬は難しくても春や秋も入れるというのは大きい」
一般的に屋外プールは7〜8月の稼働がピークで、9月以降は気温の低下とともに利用が落ちていきます。温水化によってその稼働期間を前後に広げられることは、事業収益の観点からも大きな意味を持ちます。春の行楽シーズンや秋の旅行需要にも応えられる施設になることで、年間を通じた予約の安定につながります。
「夏休みに取れない人もいるから。そういった人たちにも来てもらえる施設にしたかった」とY様は言います。
温水化で変わる、ゲスト体験の質
温水プールの価値は、稼働期間の延長だけにとどまりません。夏場であっても、水温管理はゲスト体験に大きく影響します。
屋外プールは外気温の影響を直接受けるため、真夏の日中は水温が体温に近い37〜38度まで上昇することがあります。そうなると、せっかく入りたくてもお風呂のようにぬるくなってしまい、長時間楽しめません。さらに水温は気温のピークから遅れて上昇するため、夕方に帰ってきて「さあプールに入ろう」というタイミングが、最も水温の高い時間帯と重なりやすいという特性があります。
「冷たい感じで入りたいですよね。夕方に帰ってきてプールに入ろうと思ったら、ぬるいお湯みたいになってたというのは避けたかった」
温水機能を持つヒートポンプは、設定温度に対して自動で上げ下げができるため、季節や時間帯を問わず快適な水温を維持できます。夏は冷やし、春秋は温める。この「両方向の温度管理」ができることが、屋外プールにとって特に重要な要素です。
「5月や6月に来たのに、曇っていて水が冷たくて入れませんでした、というのが一番残念な体験だと思う。それをなくしたかった」とY様は語りました。
操作はシンプルであるべき、という気づき
温水機能の充実と同時に、Y様が強く意識されていたのが「操作のシンプルさ」です。以前使用していた他社製品では、タッチパネルの操作が複雑で、スタッフが直感的に使いこなせないという課題がありました。
「機能が増えるたびにボタンも増えていく。でも、減らす努力こそ必要だと思うんですよね。一生押さないボタンって絶対あるんですよ」
家電メーカーでいえばボタンを極力減らし、必要な操作だけに絞る設計思想が支持されているように、プールの設備においても同じことが言えます。管理者が毎日使うものだからこそ、直感的に操作できることが重要です。複雑な操作は、ミスやトラブルの原因にもなりかねません。
水質管理を、もっとラクに
プールの日常管理で見落とされがちなのが、水質チェックの手間です。塩素濃度の確認は定期的に行う必要がありますが、試薬を使った目視チェックは担当者によって判断にばらつきが出ることもあります。
温泉施設などで使われる薬注ポンプのように、タンクに液体を入れておけば自動で適量を注入してくれる仕組みへの期待も大きいと言います。
「タンクに液体を入れるだけで、あとは勝手に数滴ずつ垂らしてくれる。管理目線からするとそれが理想です」
現状では水質センサーや自動薬注システムを導入しようとすると設備が大きくなりがちで、プライベートプール規模の施設には導入ハードルが高いという課題もあります。しかしY様のような管理者目線の声が、今後の製品開発に反映されていくことが期待されます。
一方で、薬品の購入体験については高く評価いただきました。
「メニュー表が全部書いてあって、シンプルに発注できる。すぐ届くのもありがたいです」
プール管理に必要な薬品を一括で取り扱っており、発注から納品までのプロセスがわかりやすく整備されていることは、日々の管理負担を減らすうえで大きなポイントになっています。
施設価値向上となるプール
プールの導入は、施設の見た目を豪華にするための投資ではありません。温水化によって稼働期間を伸ばし、水温管理によってゲスト体験を安定させ、操作性や水質管理のしやすさによって日々の運用コストを下げる——Y様の言葉からは、プールを施設の要として捉える運用者の視点が一貫して伝わってきます。
夏だけ動けばいい設備ではなく、年間を通じて施設の価値を支え続ける設備を選ぶこと。その判断が、長期的な稼働率と収益性の差につながっていきます。
INTERVIEWEE
株式会社アスノバ・デザイン
相馬 和樹
星野リゾートでホテル運営とホスピタリティを学んだ後、三井不動産レジデンシャルサービスにてマンション管理に携わり、施設管理の知識・経験を培う。現在は株式会社アスノバ・デザインにて施設責任者を務め、施設管理から宿泊施設の運営・サービス改善まで、現場と運営の両面から施設づくりに携わる。
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